アトコレ特集記事【人気作家による新作 描き下ろし&エッセイ】

<作品部分>

2011年 8F 「韻」

パネル キャンバス アクリル

金泥

 

 

アトコレ【巻頭特集】

描かれた美しき女 Best40

 

【人気作家による新作 描き下ろし&エッセイ】 より転載。

 

 

2011年3月11日を経験し人物を描く意味をあらためて考えさせられた。「セイ-生・性・清・聖・精・正・静・醒・誠…」同じ発声の言葉でも多様な意味になる文化を持つ僕らの<写実>は、隅から隅まで説明する事よりも暗喩に富み見る者の感性に訴求し、多様な解釈に耐えうる表現が大事だと確信します。


 

「当たり前のものを当たり前に描いて、それでいて尚美しい作品。」このフレーズの虜になって久しい。


当時、絵描きとして駆け出しだった僕は、自分の絵作りに必死だった。独身だった事もあり、生活の殆どが制作と仲間との際限のない絵画論のぶつけ合いと興味の趣くままサブカルから哲学、量子力学、日本史、経済学等、手当たり次第に本を読みふけって過ごしていた。

 

その中で、前出のフレーズに出会い、目から鱗、憑き物が落ちたように自分にとって大事な物の輪郭がモヤモヤしながらではあるが垣間見えた気がした。活字の中で相当頭でっかちになっていた僕は、イーゼルの周りの大量の画集を整理し本棚にしまった。大事なのは、作品を「絵」にする事ではなく、描いた作品が「絵」になる事だという事に気が付いてしまった。と同時にそれが絵描きとして相当タフな道だろうというのも覚悟した。

 

そして今もリアルにその道をトボトボ歩いており、日展、白日会、デパート、画廊等で作品を発表しながら常に僕の中に確かに実感する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2010年にアトコレ人物画特集で

描き下ろした作品。

 

 

 

 

 

 

2010年 4F 「赫夜」

パネル キャンバス アクリル 金泥

 

ここ近年人物の小品は、殆ど描いていなかったが、昨年のアートコレクターで人物の特集があり都内デパートでの個展と近かったので久々に描いたのをきっかけに、今年は公募展の出品画以外で、五点の人物画を描いた。そこで改めて自分の人物画に対する考えが少し自覚できた事が良かった。


今回の「韻」という作品は、今年最後の人物画となった。韻の意味は、本来は韻を踏むという言葉にもあるように、リズム感のある言葉の繰り返される音。中国の詩などによく見受けられる。そこから転じて風流な趣みたいな意味にも用いられる。僕は、これを心の中で響くかすかなニュアンスとして画題にした。

僕が人物画で描き表したいのは、持って生まれた容姿の美しさとは別に、やはり内面から滲み出る心情。言葉を代えれば、心栄えの美しさ。それに全てを緩やかに収斂させていく。空間設定、あるいは構図、モデルのポーズ、表情等。それらを表現する為の技術、技法を繰り返しの中で身につける。考えるより直感的に描いていく。

 

「目に見えない大切な何か、人として暖かく求めて止まない何か。」それが、僕が人物画を描くにあたり、絵画造形以前の土台を成す根幹的興味であり、歩いて心地よい道なのだ。先人達に比べれば、はるかに細い畦道かも知れないが、ゆっくりと頭を上げ、前を見つめて歩いて行きたい。

 

丸山 勉